運動好きで頭を使うことが嫌いなごく普通の小学校6年生である進藤ヒカルは、祖父の家で古い碁盤を見つける。碁盤の血痕に気づいたヒカルは、その碁盤に宿っていた平安時代の天才棋士・藤原佐為(ふじわらのさい)の霊に取り憑かれる。非業の死を遂げたという佐為はかつて棋聖・本因坊秀策にも取り憑いていたという。囲碁のルールも歴史も知らないヒカルであったが、「神の一手を極める」という佐為にせがまれて碁を打ち始める。以降、佐為はヒカル以外には姿も見えず会話もできず、物を動かすことすら出来ない存在であることを前提に物語は進む。
■おすすめポイント
『ヒカルの碁』は囲碁漫画だ。囲碁は将棋やチェスやオセロと比べれば圧倒的にマイナーゲームだろう。
『ヒカルの碁』以降、囲碁ブームが起き、碁打ち人口はかなり増えたと言われるし、僕も「ちょっと覚えてみるか」くらいの気持ちになってみたことはある。
でも正直、囲碁のルールは全くわからん。。。
漫画『ヒカルの碁』で作画を担当した小畑健先生(『デスノート』『バクマン』)は最終的に囲碁のルールを覚えないまま連載終了したと言われている。
それくらい複雑で、地味で、何やってるかよくわからないゲーム、囲碁。
それでも『ヒカルの碁』はめちゃくちゃ面白い。そして「囲碁ってなんだかわからないけど面白そう」って思わせてくれるのだ。
佐為やヒカルたちが心の中で呟く「右上スミ小目」「コスミ」「ツケ」「カカリ」などなどの専門用語が、めちゃくちゃカッコよく聞こえてくるのだ。
もはや「ニギリ」(対局前に手番を決めるためのやつ)すらかっこよく聞こえてくる。
「北斗杯編」で登場する(実は初期にも1回登場する)「初手天元」とかめちゃくちゃ痺れる。
欄外に記される解説はあくまでも一行程度の簡単なもの。それ以外はほぼなく、読者を置いてけぼりにしそうな勢いながらも、「この石が働けば黒の勝ち・・・働きを失えば白の勝ち・・・」とかなんとなく意味がわかるようなセリフも自然と入りフォローされるので「おお・・・・」って思ってしまう。
『ヒカルの碁』はキャラ漫画として完璧なのである。
囲碁という地味なゲームを題材とする以上、読者を引き込むために重要なのはドラマ性と魅力的なキャラクターだ。
主人公ヒカルを(顔は十分イケメンだが)三枚目っぽく描きながら、キーキャラクターの藤原佐為を女性かと思わせるほどに美しく、ライバルの塔矢アキラを美しくかつカッコよく描く。伊角さん、和谷、緒方さん、加賀、三谷、高永夏(コ・ヨンハ)などイケメンキャラも多く、一方でイケメンキャラクターだけなくフク、越智、本田さん、倉田さんといった冴えない見た目のキャラをきちんと仲間やライバルとして配置してみたり、塔矢名人、座間王座、桑原本因坊などの年寄りのオッさん碁打ちをバキバキにカッコよく描いたりする。
『ヒカルの碁』は進藤ヒカルと藤原佐為のダブル主人公である。
当初読み進めていた読者は「これじゃ『ヒカルの碁』じゃなくて『佐為の碁』じゃん」と揶揄していたが、話を追えば追うほど内容は『ヒカルの碁』になっていく。
ストーリー漫画の始まり方は大半して2種類に分けられる。特にスポーツ漫画はわかりやすく、全くの初心者が初期はヘッポコながらもじわじわと成長し実力をつけていく『スラムダンク』型。そして、初期から最強の主人公がバッタバッタと無双していく『テニスの王子様』型の2種類だ。
一方でこの『ヒカルの碁』はというと、主人公・進藤ヒカルを初心者としてじわじわ成長させながらも、初期は無敵の藤原佐為に打たせることで無双させるという、方式をとってこの『スラムダンク』型と『テニスの王子様』型を両立させてしまうということを成し遂げたのである。
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